講演のために車椅子で大阪へ

・・車椅子で新幹線に乗る・・



2008年7月の下旬、メールでていねいな講演依頼がとどいた。
差出人を見ると、「関西医療学園専門学校校友会理学療法部会」の西口さんからである。
西口さんが金さんのホームページ『車椅子の視線から』を見てメールを寄越したらしい。

○ 講演依頼メール(2008.7.29)


はじめまして。突然のメールで大変、失礼いたします。
ホームページを拝見させていただき、是非、我々の団体の研修会に講師としてお招きしたいと強く思い、不躾ながらご依頼の連絡をさせていただきました。
我々の団体は、大阪市住吉区にあります理学療法士養成校のOB団体で、関西医療学園専門学校校友会理学療法部会と申します。毎年、年に一度、100名〜150名ほどが参加する、我々としては大きな研修会を開催しておりまして、今年度はテーマを「リハビリを受ける側からの視点(仮名)」として企画しています。我々は理学療法士という専門職として、臨床現場で働いているわけですが、とかく技術偏重になりがちで、患者さんや利用者さんのリハビリに対する真の希望やその後の生活などを本当に考えられているのかと自問自答することが多々あります。また、若い理学療法士も増えてきまして、このような視点の重要性を理解してもらいたいと考えております。
このような理由から今回の企画に至りました。そこで、講師の方を探していましたところ、金子様のホームページを拝見することが出来ました。私としては、「この方しかいない!」と喜々としてメールさせていただいている所存です。是非、趣旨をご理解いただき、ご快諾いただければ本当に幸いです。
何卒、よろしくお願いいたします。ご連絡、お待ちしております。
 
講演会希望日:12月7日(日)、14日(日)のいずれかで、13時ごろから2時間程度(変更可能です)

−以下略−



メールを読んで、最初に大変光栄でありありがたいと思った。ただ、
@大阪が遠いこと
A12月は寒いこと 
B理学療法士への講演は始めてであること

から、引き受けるべきかどうか 少し迷った。しかし、『車椅子の視線から』のホームページを立ち上げてから、メールや掲示板(BBS)での相談などに、「少しはお役に立っている」と、生きがいすら感じている自分である。それに、今まで依頼をお断りしていないことへの自負もあった。
「ここは多少不安があってもひきうけよう。」と心に決めてから、妻の和さんに相談すると、
「大阪なの、遠いね、新幹線で行かなければならないけど大丈夫なの?」と、逆に質問された。
今までの講演依頼が関東に限られていたので、新幹線での旅行になることを心配したらしい。
「大丈夫だよ。」と返事して引き受けるメールを出すことが決まった。

○ 講演引き受けの返事(2008.7.30)


はじめまして、
ホームページ『車椅子の視線から』の管理人の金さんこと金子金一です。
講演依頼のメール拝見いたしました。私は二度の脳出血の後遺症のために車椅子の生活をしております。貴団体が計画されている研修会の講師にお招き下さるとのこと、大変光栄であり感謝申し上げます。脳出血の後遺症として、現在も四肢麻痺と言語障害が残っているので、どの程度お役に立てるかどうかわかりませんが、講演の件お引き受けしたいと思います。
引き受けるに当たっての講演会場についての質問があります。次の3点について
教えてください。よろしくお願いします。
@PowerPoint2007は使えますか。
Aマイクは使えますか。
B車椅子での移動はできますか。

なお、講演会の希望日については、そちらにお任せいたします。


○ 講演引き受けのメールで質問したことへの返事(2008.8.1)


早速のお返事、有り難うございました。今回の講演依頼につきまして、ご快諾いただけたこと、大変感謝しております。
本当に有り難うございました。
 さて、ご質問にありました事柄について、お答えします。@Aについては、問題なく使用可能です。マイクについては手持ち型マイクとピンマイク、卓上型マイクがありますので対応可能かと思われます。Bについてなのですが、壇上は問題なく移動可能ですが、壇上への昇降は、お恥ずかしい限りですが、現在のところ、スロープ等は設置しておりません。つきましては、簡易スロープを手配させてもらう予定で話しを進めております。最悪、我々がお手伝いさせていただく形になるかも知れませんが、
遠慮無く指示していただければと思います。どうか、お気遣いなきようお願いいたします。
 また、後日、講演内容等の打ち合わせをさせていただきたいと思いますので、改めて、ご連絡させていただきます。また、ご希望、ご要望もあわせて、ご遠慮なく、申しつけください。本当に、お引き受けくださいまして有り難うございました。



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○ 講演準備

1 講演原稿準備


こうして講演が本決まりになり、準備が始まった。
構音障害があるので120分程度しゃべるのはかなり大変である。そこで、パワーポイントを使うことにした。金さんのパソコンにパワーポイントはインストールしていない。この機会にパワーポイントのソフトを購入して勉強することにした。早速、インターネットでAmazon.co.jpにPowerPoint 2007を申し込んだ。12月まで時間があるので十分間に合うだろう。

講演依頼にあるテーマの「リハビリを受ける側からの視点(仮名)」は、広く解釈して、「車椅子の生活 ・・・金さん流・・・」として、リハビリを受ける立場にある金さんの、車椅子の生活になったいきさつと現在の生き方について、具体的に述べることにした。

11月になって、パワーポイントでできたスライドは24枚になった。うち9枚が画像のみで、2枚が表のスライド、文字のみのスライドが13枚である。これで、およそ90分前後かかる。後は本番が楽しみである。

2 新幹線の切符手配

約1ヶ月前の11月16日の午前中に、和さんが家から近い宇都宮線の栗橋駅に行き新幹線の切符を申し込んだ。車椅子対応の席を指定したので、「時間がかかるので、午後もう一度来てください。」と言われたと戻ってきた。夕方出直して無事往復の切符が取れた。



一日目
(2008.12.13土曜日)曇後晴

○ 久しぶりの電車

 
12月13日(土) 大阪への旅行日である。
金さん&和さんが宇都宮線の栗橋駅で、「9:16分発上野行きに乗りたい」と言うと、駅員さんが簡易スロープを持ってホームまで一緒に行ってくれた。
電車が到着すると「上野駅に連絡を入れておきますから。」と、車椅子の乗り降りが便利なスロープを渡してくれた。「ありがとうございます。」とお礼を言って電車に乗り込む。
平日だと8:30頃まで通勤客で混雑が予想されたので、「この時間なら空いているだろう」と、期待していたのだが意外や意外満員で立っている人も多い。最終車両の一番後ろの車掌さんから見えるところに車椅子で乗り込んだ。栗橋駅から土呂駅までは乗る人ばかりで、次の大宮駅から下りる人が多くなった。
上野駅8番ホームに10:16分に到着すると、駅員さんが簡易スロープを持って待っていた。
駅員さんが、公園口通路にあるエレベーターを上り下りして、品川方面に行く3,4番線に案内してくれた。車椅子だと階段を利用できないので不便である。しかし、JR(ジェイアール)になってから駅員さんが親切になり、車椅子で出かけるのにそれほど不自由しなくなったのは嬉しい。

上野駅でも、「東京からは新幹線ですね、東京駅に連絡を入れておきます。」と、親切である。



○ 久しぶりの新幹線

東京駅に着くと、駅員さん(アテンダント?)が、スロープを持って待っていた。そのアテンダントさんに付いて行くと新幹線の待合室に着いた。11時の発車迄時間があるので、「発車15分前にまたきます。トイレに行かれる場合はあちらにスロープがあります。」と教えてくれ、アテンダントさんが戻っていった。待ち時間に、身障者用トイレに寄ってから、和さんがお弁当やお茶を買う。


東京駅の東海道新幹線 ここには、モバイルコーナーというのがあり、電源まで準備されている。ちょっとしたカフェになっているので、サンドイッチを食べながら記事も書けるようになっている。

※ NTT東日本では、東海道新幹線 東京駅など3駅にてフレッツ・スポットとMフレッツ併用タイプのサービスを開始したという。
東海道新幹線 東京駅
14・15番線ホーム11号車付近待合室、
16・17番線ホーム11号車付近待合室、
18・19番線ホーム11号車付近待合室
他では、東海道新幹線 品川駅 ホーム全域・改札フロア全域


11時15分前に新幹線の待合室にアテンダントさんがやってきて、11時発の、のぞみ123号新大阪行きが発車する18番線に送ってくれた。列車が入線するとアテンダントさんが簡易スロープを渡した所から、座席まで車椅子を押してくれたので助かる。

 
のぞみ123号 (11号車)


金さん&和さんの座席は、11号車の後部から2列目12番のA席とB席である。
最後部は1列だけ
の2列である。C席のあるところを1列分外してあるので、そこに和さんが車椅子を置いた。
D席E席は富士山が見えるのだが、車椅子が置けないので和さんが今回は外したという。ただ、進行方向左側なので午前中強く日が当たる。ブラインドを下げなければまぶしくてせっかくの窓際も景色を楽しむどころではない。
後日気がついたことだが、車椅子で富士山を見るには、富士山が見える右側のD席とE席を取って、車椅子をデッキに置く方法が考えられるようだ。

お体の不自由なお客さまへ(JR東海)

新幹線には、歩行の不自由なお客さまや、気分の悪くなったお客さまなどがご利用いただける多目的室がございます。なお、先約等によりご利用いただけない場合もあります。


手摺付きのトイレ(身障者用トイレ)は、11号車から近いことを確認できた。
車椅子での利用もし安いようである。
ただ、今回の旅行では場所を確認しただけで利用はしなかった。







なお、11号車のグリーン車寄りには自動販売機コーナーがあるという。

午前11時に東京駅を発車したのぞみ123号は、品川、新横浜、名古屋、京都に停車して、13:36分に新大阪駅に到着した。2時間36分とは早い。途中で和さんが東京駅で買った駅弁を食べ、車内販売で買ったコーヒーを飲んだだけで、ウトウトする間もなかった。

新大阪駅に到着すると、駅員さんが11号車の所に待っていた。金さんの甥の敬くんもホームまで来てくれて待っていたので力強い。
「新大阪駅から大阪市営地下鉄でなんばまで行きたいのですが」と、駅員さんに予定を告げると、エレベーターで下りて乗客用の改札を通らないで、職員用の出入り口?のような所から地下鉄に通じる通路に案内してくれた。



○ 地下鉄に乗る


地下鉄御堂筋線の新大阪駅で駅員さんが案内してくれたのは、「女性専用車両」の停車する場所だった。土曜日なので乗客は少ない。
「なんば」駅で降りると敬くんが車椅子を押してくれた。地上に出て通りの向こうに新歌舞伎座を見ながら、敬くんと金さん&和さんで、宿泊先の「スイスホテル南海大阪」へまっすぐ向かった。

※ スイスホテル南海大阪:大阪市中央区難波5-1-60
                    п@06−6646−1111

このホテルは、講演の主催者である、関西医療学園専門学校校友会理学療法部会の西口さんが車椅子で泊まれるホテルということで探してくれた。

地下鉄御堂筋線なんば駅直結で、新大阪駅からは地下鉄利用で約20分、また、バリアフリー対応部屋があるところがありがたい。

チェックインすると、和さんが、事前に送っておいた旅行バックがフロントに届いていた。
部屋は14階だった。

エレベーターのフロアの窓から、なんばパークスがよく見える。(右上の写真)
大阪球場跡地に2003年10月にオープンした大型ショッピングモール。
自然と都市を同時に体感できるような緑の多い造りが特徴という。

ホテルの部屋には車椅子で利用できるバス、トイレルームがある。
バスの手すりの角度が使いやすそうだった。

敬くんと金さん&和さんで、6階の「カフェ スイス」でお茶をした。
今年の正月に、敬くん&みっちょマンで家に来て以来になるので、話すのは久しぶりである。


明日は講演会場で落ち合うことにしてこの日は分かれた。

夜7時前に、関西医療学園専門学校校友会理学療法部会の西口さん篠原さんが、明日の講演会の打ち合わせにやってきた。
明日は、自動車でホテルに11時45分頃迎えに来てくれるという。


それほどお腹も空いていないし、和さんに頼んでおにぎりを買ってきてもらい夕食を済ませて早めにベッドで横になる。やはり疲れたのだろうか? ぐっすりと眠ってしまった。





熟年夫婦の田園生活 車椅子の視線から